2021/8/4 日記

私はとあるサークルに所属している。先日、そのサークルの知人であるAさんから急に連絡があった。普段連絡なんかしないくせに、珍しく平日の昼間である。立っている写真か中腰の写真を30分以内にとって送ってくれということだった。サークルの会報誌に使う写真らしい。普通に訳が分からなかったし、写真に写るのは好きではないので固く断ったが、ないと本当に困るというので何とかとることにした。しかし、家に一人しかいなかったので、セルフタイマーで机にカメラを置いて離れた位置からとるしかない。在宅だったので服はかなりリラックスしたものだったので急いで着替えたり、背景がきれいなところというところで、いろいろ挑戦したがどうしてもとても出せるのものができなかった。正直ほかにもやることがたくさんあるので、怒られるのを承知で「できませんでした…」とラインを送る。すると件の写真が送られてくる。大きな公園の噴水の前で、二十人程度のサークルメンバーが集まっている集合写真だ。おそらく有志で行われたイベントに参加した時にとった集合写真らしい。私は当日体調が悪く欠席していたのだった。集合写真には1人分の穴が開いていた。これは、本来いた人間をどうやら加工で消したらしい。これを行う意味も私にはわからなかったが、深く突っ込まずにいることにした。このだれかのスペースを埋めるために写真が必要だったらしい。確かにこのままでは不自然である。しかし、結局写真は撮れなかったのだ。そのことを申し訳なく伝えると、「そしたら何とかする」と頼もしい言葉。最初からそうして欲しかった。私にここからできることはないので、その件は忘れることにした。

 後日、例の写真を目にすることがあり、目を疑った。以前依頼の際に、1人が消された写真を見せてくれた。その穴を埋めていたのは、私だったのだ。しかも、まるで合成などされていないかのような見事な出来栄えである。どこからか写真を入手したのかはわからないが、写真を持っていたならその写真を使えばよかったのに…。あの頑張った時間はなんだったんだ…。ともやもやしていた。無事写真が載った会報誌は発行され、メンバーと合宿楽しかったよね~と会報誌を囲んで和気あいあいと会話をした。しかし、この状況でしばらく活動は休止、メンバーともSNS上で生存を確認する中である。写真を依頼してきたAさんは、会報誌発行後からサークルに参加する頻度が減り、メンバーが入っているチャット上のステータスが「オンライン」になることもなくなった。

 最近ふとその例の写真を見て気づいたことがある。私が合成されたスペース、消された「1人」が写っていたスペースの場所にうつっていたのは、おそらくAさんであることにだ。今となってはなぜ自分の写真を消したのか、なぜ私を加工して入れたのか理由を聞くことはできないし、憚れるが後味の悪さだけが付きまとっている。